ビニールクロスのデメリットと健康被害、紙クロスのメリットについて
新築やリフォームの際、内装材として一般的に使われる「ビニールクロス(塩化ビニル樹脂壁紙)」は、価格の安さや施工のしやすさ、柄のバリエーションの豊富さから多くの住宅で採用されています。しかし、素材の特性や製造工程、長期的な視点から見ると、いくつかのデメリットや懸念点があります。ここではビニールクロスのデメリットや健康面への影響、そしてその代替として注目される「紙クロス」のメリットについて解説します。
【ビニールクロスのデメリット】
1. 通気性・調湿性の欠如
ビニールクロスは樹脂製であるため、空気や水蒸気をほとんど通しません。そのため、壁内の湿気が逃げにくくなり、結露やカビの原因となることがあります。特に高気密・高断熱住宅では、壁内の湿気対策が重要で、ビニールクロスはそれに適さない場合もあります。
日本では、壁紙と言えばビニールクロスが主流で、全ての壁紙の中で91%も生産出荷されています。
2. 静電気によるホコリの吸着
ビニール素材は静電気を帯びやすく、空気中のホコリや花粉、たばこの煙などが付着しやすいという特性があります。これにより壁の汚れが目立ちやすく、清掃の手間が増えたり、空気中のアレルゲンが滞留する一因にもなります。
3. 経年劣化と見た目の変化
ビニールクロスは紫外線や熱により徐々に黄ばみや変色を起こすことがあります。また、継ぎ目の部分が時間とともに目立ってきたり、剥がれてくることもあります。耐久性はあるものの、劣化が進んだ際の見た目の劣化は避けにくいという側面があります。
【ビニールクロスと健康被害】
1. ホルムアルデヒドや可塑剤の問題
一部のビニールクロスや接着剤には、化学物質であるホルムアルデヒドや可塑剤(フタル酸エステルなど)が含まれている場合があります。これらは「シックハウス症候群」の原因物質とされ、頭痛・めまい・喉の痛み・皮膚のかゆみなどの症状を引き起こす可能性があります。特に小さな子どもや化学物質に敏感な人にとっては注意が必要です。
海外の病院では、使用が禁止されている国もあります。
2. 燃焼時の有毒ガス
ビニールクロスは火災時に燃えると有毒ガス(塩化水素など)を発生する可能性があります。これは避難時の呼吸困難や毒性による被害の原因になり得ます。もちろん通常の生活では問題になりにくいものの、環境問題にも大きく影響します。
【紙クロスのメリット】
一方、自然素材を原料とする和紙を含む「紙クロス(紙壁紙)」は、環境や健康への配慮から、近年注目されている内装材です。
1. 調湿性・通気性に優れる
紙クロスは天然素材からできており、空気や湿気を適度に通す性質があります。これにより、壁内の湿気がこもりにくくなり、結露やカビの発生を抑える効果が期待できます。湿度のバランスを自然に整えることで、室内の空気環境がより快適になります。
また、珪藻土のクロスや、珪藻土ペイントなどもあり、調湿効果以外に化学物質を吸収分解してより良い空気環境を作ることが出来ます。
2. 有害物質の心配が少ない
紙クロスは、無漂白のパルプや天然素材を用いて製造されることが多く、揮発性有機化合物(VOC)の発生がほとんどありません。また、接着剤にも自然由来のものを使えば、化学物質による健康被害のリスクを大きく下げることができます。
3. 自然な風合いと美しさ
紙クロスには温かみのある質感があり、光の当たり方や時間帯によって表情が変わる自然な美しさがあります。塗り壁のようなナチュラルな印象に仕上がるため、木のインテリアや自然素材の家づくりとの相性が非常に良いです。
4. 環境負荷が少ない
製造時のCO₂排出量が少なく、燃やしても有害ガスが発生しにくい点でも、紙クロスは環境に優しい建材といえます。施工後も自然に還る素材として、サステナブルな住宅づくりに貢献できます。
【まとめ】
ビニールクロスは施工のしやすさとコスト面で優れた選択肢ですが、調湿性の欠如や静電気による汚れ、化学物質のリスクといった課題も抱えています。対して紙クロスや珪藻土クロス、珪藻土ペイントなどは自然素材ならではの調湿性や安全性、そして空間に温もりを与える美しさが魅力です。
最近の住宅は、昔の家に比べて気密度が高くなっています。ビニールクロス(壁、天井で使用面積が広い)で密閉された空間は居心地の良い空間とはいえません。
また、健康被害にもつながりますのでタテルナラでは、予算に応じて自然素材を使い分けています。
健康や環境への配慮、そして長く心地よく住める家を目指すなら、紙クロスのような自然素材の壁紙を選ぶ価値は十分にあります。コストはやや高めになりますが、毎日の暮らしの質を左右する「空気と肌に近い場所」にこそ、よりよい素材選びをしたいものです。