石澤 眞知子 石澤 眞知子

新築におけるパントリーの作り方

 

 

パントリーとは

 

パントリーは、食品やキッチン用品を収納するスペースのことです。キッチンの近くに設けられることが多く、食材や調味料の保管、キッチン家電の収納など、家事効率を高める役割を果たします。新築住宅において、パントリーをどのように設計するかは、使い勝手や家全体の収納計画に大きく関わる重要なポイントです。

 

パントリーを作る際の基本的な考え方

1. 目的を明確にする

• 食品庫としての利用

主に乾物や缶詰、調味料などの長期保存が可能な食品を収納する場合、適切な温度管理と湿度対策が必要です。

• 日用品やキッチン家電の収納

掃除用具や簡単な大工道具の置き場やトイレットPPやティッシュのストックなどの置き場としても便利です。

また調理家電(ミキサー、炊飯器など)を収納する場合、コンセントや棚板の設計がポイントになります。

特にコンセントは、家電の数に合わせてゆとりをもって設置し、時にはアースー付きのコンセントも必要になる事があります。

• ストック食品の管理

買いだめした調味料、飲料やお菓子、非常食などを効率よく保管するスペースとしても使えます。

それぞれカテゴリーを分けて名札を付け、一目でどこに何があるかを把握できるようにしておくと便利です。

 

2. キッチンとの動線を考える

• パントリーはキッチンと隣接しているのが理想的です。動線が短ければ短いほど、調理中の食品取り出しや片付けがスムーズになります。

• ダイニングや玄関からもアクセスしやすい位置に配置すると、買い物帰りの荷物整理が効率化します。

 

3. 収納力と出し入れのしやすさを両立

• 棚の高さや間隔を自由に調整できるようにすると、食品や家電のサイズに合わせて収納スペースを最適化できます。使用頻度の多いものは、手の届く位置   に配置し、下段,中段、上段と使い分けると便利です。特に荷重の重たいものは床に置く形が良いでしょう。

 

•棚の奥行きは45㎝から60㎝位が使いやすく、どうしても奥行きの深い棚の場合はスライド棚を採用すると、奥のものまで簡単に取り出せるため、収納効率が上がります。

 

4. 環境条件を整える

 

• 食品を長期間保管する場合は、直射日光が当たらない場所に設け、温度と湿度が一定に保たれる環境が理想です。

• 換気が重要なので、小窓や換気扇を設置するか、ドアに通気口を付けることを検討しましょう。視覚的に直接人目につかない場所にパントリーがある場合は、入り口をテキスタイルやのれん等で仕切るのも使いやすいです。

 

パントリーの設計・レイアウト

 

1. ウォークインタイプ

• 特徴

パントリーの中に人が入り込めるタイプ。大型の冷凍庫やストック用の棚を設置しやすい。

• メリット

大容量で収納力が抜群。棚を多段設置すれば効率よく使える。

• デメリット

一定のスペースが必要。動線が長くなりすぎると使い勝手が悪い。

 

2. ウォークスルータイプ

• 特徴

キッチンとダイニング、またはキッチンと玄関をつなぐ通路としてのパントリー。

• メリット

動線が効率的で、収納スペースとしても機能する。買い物帰りの荷物をそのまま置ける。

• デメリット

通路の幅を確保する必要があるため、収納スペースが制限される場合がある。

 

3. 壁面収納タイプ

• 特徴

キッチンの壁面に沿って設置するタイプ。スペースが限られている場合に適している。

• メリット

省スペースで設置可能。すぐにアクセスできる。

• デメリット

収納力が他のタイプより劣る場合がある。

 

パントリーを設ける際の具体的なポイント

 

1. スペースの確保

• 家の設計段階で、どの程度のスペースをパントリーに割り当てるかを明確にします。これは、家全体の広さと大きく関係します。また、住む人の生活スタイル(例えば1週間に1回の買い物の人、毎日買い物に行く人等)によっても変わってきます。

 

• 一般的な目安として、1〜2畳程度の広さがあれば、家庭用の食品や日用品を十分収納できます。

 

2. 棚の設計

• 棚の間隔は30〜40cm程度を基本とし、缶詰やペットボトルなどの収納に合わせて調整可能な可動棚を設置します。棚の奥行きは、深すぎると奥の物が出しにくく、使いずらいので、45センチ位が使いやすいです。

• 下部には重量のある家電や飲料のストックを置き、上部には軽いものを収納するように設計します。

 

 

3.扉の選択

• 開き戸、引き戸、ロールスクリーンなど、スペースやデザインに合わせて選択します。開き戸の場合、開閉スペースを確保する必要がありますが、完全に隠せるメリットがあります。また、開き戸の開閉スペースが狭い場合は、折れ戸の選択技もあります。

• 扉をつけず、テキスタイル、カーテン、のれん等で軽く仕切りオープン棚にすることで通気性を高めると共に、開閉の手間も省けるので使い易いです。

 

4. コンセントの配置

• 炊飯器や電子レンジなどの調理家電を置く場合、棚の近くにコンセントを設置します。家電を使う場所とコードの長さを考慮して、使いやすい高さに設置しましょう。また、家電が増えたときにタコ足配線にならないように、コンセントの個数はゆとりをもって設置することをお勧めします。

 

5. 照明の選択

• パントリー内は暗くなりやすいため、手元がしっかり見えるように明るい照明を設置します。頻繁に出入りしたり、手に物を持ってる事が多いので、人感センサー付き照明を採用すると便利です。

 

パントリー設計で注意すべきポイント

 

1. 湿気対策

• パントリー内が湿気でいっぱいになると、食品の劣化やカビの発生につながります。換気扇や通気口、小窓を設けると効果的です。

 

2. 温度管理

• 冷蔵庫や冷凍庫を設置する場合、パントリー内が熱くなりすぎないように注意が必要です。適切な換気と遮光が重要です。

 

3. 安全性

•地震対策として高い位置に重いものを置かないようにし、棚に物を置く場合は滑り止めのゴムマットなどを敷くと良いでしょう。パントリーの中は、全て棚板で構成されているので、転倒防止対策はいらないでしょう。

 

4. 動線の確保

 

• キッチン内での動線が複雑になると、使い勝手が悪くなります。パントリーはあくまで家事効率を高めるための場所であるため、過度に離れた場所に設置しないことが重要です。

 

実際の活用アイデア

 

1. 分類収納で管理しやすく

 

• 食品や日用品をカテゴリ別に分けて収納すると、どこに何があるか一目で分かるようになります。透明な収納ボックスやラベルを使うと便利です。

 

2. 定期的な見直し

 

• パントリー内の食品やストック品は、定期的に賞味期限や在庫を確認して、無駄を防ぐことが大切です。

 

3. スペースを有効活用

 

• 壁面にマグネット式の収納グッズを取り付けたり、吊り下げ収納を活用することで、限られたスペースを効率よく使えます。

 

結論

 

新築住宅におけるパントリーは、設計段階でしっかりと計画することで、日々の家事効率を大幅に向上させることができます。目的や使用用途を明確にし、適切なスペース配分、環境条件、収納設計を行うことで、理想的なパントリーを実現しましょう。

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