石澤 眞知子 石澤 眞知子

在宅ワークと暮らしを分ける”居場所”の作り方

公開日:2025/10/28(火) 更新日:2025/10/30(木) 家づくりのこと

在宅ワークと暮らしを分ける、“居場所”のつくり方

― 高性能住宅だからこそ叶う、集中とリラックスの両立 ―

ここ数年で定着した「在宅ワーク」という働き方。
自宅が“職場”にもなる暮らしの中で、多くの方が感じているのが「オンとオフの切り替えの難しさ」ではないでしょうか。
家族と過ごすリビングのすぐ隣で仕事をする。気がつけば、一日中どこか落ち着かない。そんな声を、家づくりの打合せの中でもよく耳にします。


1. 在宅ワークが「居場所の問題」になる理由

もともと日本の住宅は、家族が一緒に過ごすことを前提に設計されてきました。
そこに「働く」という行為が加わったことで、従来の間取りではうまくバランスが取れなくなっています。
特に共働きや子育て世代にとって、家の中で“自分の時間”や“集中できる空間”を確保するのは簡単ではありません。

また、音・温度・明るさといった環境要因も大きな影響を与えます。
たとえば、オンライン会議中に生活音が聞こえてしまう。冷暖房の効きが悪く、集中できない。これらは建物の性能にも深く関係しています。

高気密・高断熱住宅では、室内の温度差が小さく、外部の音も遮断されやすい。つまり「快適なワーク環境」をつくるための土台がすでに備わっているのです。


■ 2. 暮らしと仕事を“分ける”空間設計の工夫

在宅ワークの空間づくりで大切なのは、広さよりも「距離感」と「心理的な区切り」です。
同じ家の中でも、使い方や素材の工夫で気持ちの切り替えができるようになります。

動線で分ける

リビングやキッチンを通らずに、仕事スペースへ入れる動線を確保すると、家族の生活と自分の時間を分けやすくなります。
玄関近くにワークルームを配置するのも効果的です。通勤感覚で“仕事モード”に入りやすく、来客対応にも便利です。

目線で分ける

完全な個室が難しい場合は、室内窓や半透明の建具で視線をやわらかく遮る方法もあります。
小さな仕切りや本棚ひとつでも、空間の印象が変わり、心に区切りが生まれます。

素材で分ける

たとえば、リビングは柔らかな木の質感で落ち着きを、ワークスペースは壁を漆喰や珪藻土などマットな質感にして集中しやすくする。
素材の違いは“感覚のスイッチ”をつくり、自然とオン・オフを切り替えやすくします。


3. 高性能住宅だからできる、静かで快適なワーク環境

在宅ワークでは「音」と「温度」がストレスの大きな原因になります。
一般的な住宅では、リビングのテレビ音や外の車の音が仕事中に気になってしまうことも少なくありません。

しかし、高気密・高断熱の家では外部からの騒音を遮断し、室内の音もこもりにくくする工夫が可能です。
たとえば、TATERUNARAの家では、窓まわりの気密性能を高めることで外気の影響を最小限に抑えています。
また、24時間換気システムによって空気が一定に保たれ、室温や湿度のムラも少なくなります。

この「静かで穏やかな空気感」は、集中力を保つ上で大きな力を発揮します。
さらに、冬も夏も快適に過ごせる温熱環境が、長時間のデスクワークによる体の負担を軽減します。


4. 家族の“気配”を感じるワークスペースのあり方

完全な個室で孤立してしまうと、逆に孤独感を覚えることもあります。
子どもの様子を感じながら作業したい、家事の合間にメールをチェックしたい。
そんな場合は、リビングに面した小さな「ワークコーナー」や「ヌック」がおすすめです。

たとえば、階段下やキッチン横の余白を活かして、デスクカウンターを設ける。
高気密・高断熱住宅なら、家全体が均一な温度環境のため、どこにいても快適に作業できます。
冬でもリビングの端のスペースが寒くならないのは、大きな利点です。


5. “心の余白”を守る、暮らしとのバランス

仕事の効率を上げるための空間づくりはもちろん大切ですが、
本当に大事なのは「暮らしの中にどれだけ余白を残せるか」です。

窓からの光や風、庭の緑、家族の気配。
そうした小さな要素が、働く時間にも穏やかさをもたらします。

たとえば、デスク前に小さな窓を設けて外の木々が見えるようにしたり、
手を休めるたびに季節を感じられる工夫を取り入れたり。
高性能住宅であれば、窓を開けても温度差が少なく、自然とのつながりを感じながら働くことができます。

仕事のための「空間」ではなく、
仕事も暮らしも受け入れる「居場所」をつくる。
それがこれからの在宅ワーク時代にふさわしい家のかたちだと思います。


  “働く”と“暮らす”を優しくつなぐ家へ

在宅ワークを快適にするために必要なのは、
間取りの工夫と、高性能な建物の「環境設計」です。

  • 動線や視線で空間をゆるやかに分ける

  • 音・温度・湿度をコントロールできる高気密高断熱仕様

  • 自然を感じられる小さな窓や庭の設計

これらが整うことで、家は「仕事の場」から「心地よい居場所」へと変わります。

TATERUNARAでは、単にワークスペースをつくるのではなく、
“暮らしと働くことの調和”をテーマに家づくりを行っています。

それぞれの家族にとってちょうどいい距離感を見つけながら、
「自分らしく働き、自分らしく暮らせる家」。
そんな住まいを、これからも奈良から提案していきたいと思います。

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